2014年3月5日水曜日

ウクライナ情勢と「まんが世界昔ばなし」ナイチンゲール

日曜日の早朝、東京MXテレビという東京ローカル局では、「まんが世界昔ばなし」というのを再放送している。
70年代、「まんが日本昔ばなし」を受けて制作された。
当時は「まんが偉人物語」とか「まんがはじめて物語」とか、今の大人をもターゲットにする深夜帯のアニメがある時代では考えにくい番組。再放送という形だが、東京MXテレビを褒めたい。

 3月2日の放送は「ナイチンゲール」だった。
昔ばなしと言いながらも、世界の童話や民話に限らず、シェークスピアやギリシア神話など多岐に作品が広がる中、偉人物語のジャンルもあった。
 ナイチンゲールは、看護婦(あえて看護師でなく)という職業の先駆けで確立した人、その行動は国際赤十字の誕生を生んだ。
彼女にあこがれて看護婦になった女性は世界中にたくさんいる。
 そのナイチンゲールが、看護婦という仕事を始めるに至ったのが、1854年に始まるクリミア戦争だ。
 奇しくも、ウクライナ情勢が緊迫する2014年まさしく、今世界が注視する場所こそがクリミア半島なのだ。160年の時を経て、東京MXテレビの「ナイチンゲール」がぴったりシンクロしてしまった。


 産業革命の進展は兵器産業の技術革新も起こし、クリミア戦争はそれまでにない大砲や銃で兵士の殺傷能力を著しく向上させた。
ナイチンゲールの献身的な看護は、傷病兵の死亡率を下げ、国も一定の評価するようになるが、それは、回復した兵士を再び戦場に送り込めるからで、彼女自身、派手に宣伝されるのを嫌っていたようだ。


 ナイチンゲールは長命で90歳まで生き、実はクリミア戦争後もいろいろな分野で活躍をした人で、日本では海軍の軍医高木兼寛がイギリス流の医療ともに看護婦の仕組みを日本に広めた。
ちなみに森鴎外こと森林太郎は、陸軍の軍医としてドイツ流の医療を広めた。
日本の近代医療はこの二派のせめぎあい、吉村昭さんの小説「白い航跡」に詳しく載っている。

 医師のみで医療は成り立たず、看護の重要性は今や当たり前の事実だが、160年前戦場での負傷兵の看護が兵力補充へ貢献することにより認められるという皮肉な評価がスタート地点であった。
せめて21世紀の今日、戦場での看護そのものが起きない世界を人類は目指さないといけない。


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