2014年3月11日火曜日

アルキメデスの不思議な機械

塩野七生さんの「ローマ人の物語」を読み返している。
ちょうど古代ローマと強国カルタゴの死闘、ハンニバルが登場する第2次ポエニ戦役の箇所だ。
カルタゴの植民地スペイン育ったハンニバル軍が象を伴いアルプスを越えてローマ本土にやってくる。
戦術の天才ハンニバルは次々にローマ軍を打ち破り、首都をかすめて南部イタリアに16年にわたって居座る。
現代の戦車象、アフリカの騎兵を縦横に操るハンニバルに対してローマの武将は歯が立たない。
決戦を避け持久戦に持ち込んだローマも、やがて、スキピオというもうひとりの軍才ある青年の登場で反攻に転じていく。
 しかし、歴史はそう上手くはいかない。
シチリアのシラクサでの戦線が膠着する。
このシラクサに住む著名な数学者の繰り出す奇想天外な兵器でローマ軍は攻めあぐねてしまう。
その数学者はアルキメデスだ。
塩野さんが言うには、ローマ軍のみならず2000年後の高校生まで悩ましちゃうすごい人なのだ。
 
ちょうど先日NHKの海外のドキュメンタリー番組で、「アンティキテラ島の機械」をやっていた。
前から読みたいと思っていた「アンティキテラ 古代ギリシアのコンピュータ
という本のTV版だ。
100年前、ギリシアのアンティキテラ島の近くで見つかった沈没船に、2000年以上前に作られたとは思えないいくつもの歯車を持った精巧な作りの機械が見つかった。
雑誌「ムー」的に言えば、オーパーツ。
人類を凌駕する文明を持った異星人、又はアトランティスの人々、はたまた時間旅行者が間違って落としていったものか、同じような精巧な機械は、約1000年後のルネサンス時代になるまで現れない。いったい誰が何のために・・・?
 ドキュメンタリーは、近年特に進んだ光学的解析技術等をとり入れて、この機械の正体を突きとめていく。
その正体は、ネタバレなのでここでは明かさず、その設計思想が明らかになる。
小型化、専門家以外にもわかる取説付き、インターフェイスの理解しやすさ、つまり、携帯パソコンを作る思想と同じなのだ。
要は携帯〇〇を作ったのだ。
 では、これを誰が作ったのか?月の神の名前からコリントス人であると予想される。
アルキメデスのいたシラクサはコリントス人が作った町だ。

第2時ポエニ戦役、アルキメデスの知恵に舌を巻くローマもやがて、シラクサを攻略する。地面に書いた数学の問題を解くのに必死でローマ軍に攻め込まれたことを知らないまま、無名の兵士に殺されたアルキメデス。
アルキメデスが持つ2つの機械のうち1つはローマの武将が戦利品として持ち帰る。
その子孫が、披露した様子をローマ時代の文筆家キケロの記述から知ることができる。
その内容が、正しくアンティキテラの機械と同じ機能を示している。

アンティキテラの機械、機械に刻まれた神の名、同じ神の名を持つシラクサの民、アルキメデスの機会を持ち帰ったローマの将軍、キケロの記述。それぞれが繋がり、環が完成する。
1個の機械の解明が、伝承されている歴史が事実であったことをより強くさせている。
シラクサの街の路上で地面にひたすら数式を書くアルキメデス、2000年以上前に本当にあったシーンなのかもしれない。

 「アンティキテラの機械」は、現代人に古代の人の息遣いを感じさせる、そんな機能もあるのかもしれない。

2014年3月7日金曜日

第6回恵比寿映像祭に行ってきました。

今年も恵比寿の写真美術館で行われた映像祭に行ってきました。
この映像祭は新しい映像の表現を求めて様々な映像作家の作品が無料で観られる大変画期的な映像祭です。

私はこの映像祭に第三回から4年連続で観に来ています。
こうなると第一回も第二回も観たいと思ってしまいます。

それほどこの映像祭には映像人として期待しています。


そして今年も期待する映像祭が行われました。



(TRUE COLORS)


と題するように今年一番目を引いたのは分藤大翼BUNDO DAISUKEさんの南アフリカの熱帯雨林地域に暮らすバカ族の記録映像でした。


記録は壊れたカセットテープを修理し、再生するまでの過程を記録した映像です。


別に何か起こる訳のない何の変哲もない映像ですが、全く環境の違う地域に暮らす人々の生活を特別な映像に感じました。



豊かな民族音楽を継承する人々の間にもラジカセが浸透するなど徐々に生活の変化の波が押し寄せている。


そんな記録映像が淡々と流ながれていました。



改めて映像とは


〝意味のあるもの〟と感じました。


どんな映像にも意味がある。

〝意味のない〟映像にも〝意味のない〟という意味がある。


時代が進み
これからも映像がどんどん変わっていく事でしょう。


しかしこれだけは変わらない事です。




意味のある情報を

どう表現するか?

どう発信するか?

これからの時代は問われるものだと思います。



それ突き詰めるという意味で恵比寿映像祭の存在はとても貴重なものであると感じます。

2014年3月5日水曜日

ウクライナ情勢と「まんが世界昔ばなし」ナイチンゲール

日曜日の早朝、東京MXテレビという東京ローカル局では、「まんが世界昔ばなし」というのを再放送している。
70年代、「まんが日本昔ばなし」を受けて制作された。
当時は「まんが偉人物語」とか「まんがはじめて物語」とか、今の大人をもターゲットにする深夜帯のアニメがある時代では考えにくい番組。再放送という形だが、東京MXテレビを褒めたい。

 3月2日の放送は「ナイチンゲール」だった。
昔ばなしと言いながらも、世界の童話や民話に限らず、シェークスピアやギリシア神話など多岐に作品が広がる中、偉人物語のジャンルもあった。
 ナイチンゲールは、看護婦(あえて看護師でなく)という職業の先駆けで確立した人、その行動は国際赤十字の誕生を生んだ。
彼女にあこがれて看護婦になった女性は世界中にたくさんいる。
 そのナイチンゲールが、看護婦という仕事を始めるに至ったのが、1854年に始まるクリミア戦争だ。
 奇しくも、ウクライナ情勢が緊迫する2014年まさしく、今世界が注視する場所こそがクリミア半島なのだ。160年の時を経て、東京MXテレビの「ナイチンゲール」がぴったりシンクロしてしまった。


 産業革命の進展は兵器産業の技術革新も起こし、クリミア戦争はそれまでにない大砲や銃で兵士の殺傷能力を著しく向上させた。
ナイチンゲールの献身的な看護は、傷病兵の死亡率を下げ、国も一定の評価するようになるが、それは、回復した兵士を再び戦場に送り込めるからで、彼女自身、派手に宣伝されるのを嫌っていたようだ。


 ナイチンゲールは長命で90歳まで生き、実はクリミア戦争後もいろいろな分野で活躍をした人で、日本では海軍の軍医高木兼寛がイギリス流の医療ともに看護婦の仕組みを日本に広めた。
ちなみに森鴎外こと森林太郎は、陸軍の軍医としてドイツ流の医療を広めた。
日本の近代医療はこの二派のせめぎあい、吉村昭さんの小説「白い航跡」に詳しく載っている。

 医師のみで医療は成り立たず、看護の重要性は今や当たり前の事実だが、160年前戦場での負傷兵の看護が兵力補充へ貢献することにより認められるという皮肉な評価がスタート地点であった。
せめて21世紀の今日、戦場での看護そのものが起きない世界を人類は目指さないといけない。